こんにちは。竹内です。
真珠の鑑定書に「巻き厚」が記載されるようになって20年以上経ちますが、いまでもこれが「誤解の根源」になっていて、悪いお店の「騙しテク」として利用されています。
そこで、この記事を読んでいただいた皆様に、目からうろこ、きちんと腑に落ちる情報をシェアしたいと思います。
まず、こちらをご覧ください。
砂浜があって、徐々に海が深くなっていく様子がわかりますね。じつは、真珠の巻き厚については、この写真一枚でほぼ説明可能です。なお、この記事では海水を真珠層に置き換えて、
砂浜:模造品
波打ち際:薄巻きの真珠
明るい青:標準的な巻き厚数値の真珠
濃い青:巻き厚数値が大きな真珠
と理解するのが正しいことを説明してまいります。
まず質問です。
1)このように海の色が違って見えますが、実際にガラスのコップに海水を汲んだとき、汲んだ場所によって水の色も違いますか?
2)なんらかの自然現象で海水がむちゃくちゃ濁ったとき、写真と同じ景色が見られますか?
この質問に答えられた方は、もう真珠の巻き厚について正しい理解ができたも同然です。
では、順に説明してまいります。
砂浜:模造品
海水を真珠層に置き換える前提のお話ですので、海水のない砂地は真珠層の巻き厚ゼロ=模造品です。これを核と考えるのもありだと思います。
波打ち際:薄巻きの真珠
海水はありますがとても浅い状態で、海の青さはあまり感じられません。波の影響で海水があるとき、ないときがあり、不安定です。これは、真珠層が巻いているがとても薄い状態で、豊かな干渉色(てり)は見られず、変色、層割れ等の問題が起こりやすい不安定な状態にあたります。
明るい青:標準的な巻き厚数値の真珠
南国の蒼い海という響きから多くの方が連想する青さではないでしょうか。花珠真珠、良質な真珠という響きから多くの方が期待するであろう美しさや干渉色がここにあります。海の場所によって、さまざまな蒼さがあるように、真珠の個性や美しさも様々です。ピンク系、ピンクグリーン系、グリーンピンク系といった分類がされるのは、海の蒼さを表現するためのものとご理解いただけると思います。また、その日の天候や太陽の位置によって海の蒼さが違って見えるように、真珠も自然光で見るのか、ライトの下で見るのか、ライトの色はどんなか、によって違った表情を見せます。観光地がビーチのPRをするための写真は、華やかで、多くの人の感性に響く美しさが見られるときを狙って撮影すると思いますが、真珠の写真にも狙った美しさが表現されていることは珍しくありません。好みの美しさは人によって違いますが、波打ち際ではキラキラと光が反射する美しさこそあるものの、そこに青みはほとんどありませんね、海の蒼さを語るには(真珠の美しさを語るには)このくらいの深さ(薄巻きではないこと)が必要なのですが、海を見たことがない人に海の青さを見せず、波打ち際のキラキラに注目させて「きれいですねぇ」と言うのは、真珠の表面光沢を「てり」だと誤解させて、強い光を当てて「てりが強いですねぇ」というのと同じです。海の青さに海面のキラキラが重なって、相乗効果できれいに見える状態、それが私たち業者がいう「良いテリ」です。
濃い青:巻き厚数値が大きな真珠
海が深い=巻き厚数値が大きいということです。とても重要なことです。例えば鑑定書の巻き厚測定値が 1.0mm だったとします。これは真珠海の水深が 1.0mm、結構な沖だということです。好みは人それぞれですが、もう少し浅いあたりの海の青さが好きな人に、沖の青さを見せて喜んでいただけるでしょうか?別の言い方をしますと、あなたの好みの海の青さは沖にありますか?真珠の巻き厚測定値が大きいほど良い真珠だと刷り込まれてしまうのは、沖の青さの受け入れを強要されてしまうようなものではないでしょうか。
結論:真珠は薄巻きでさえなければ、厚さよりも質が重要!
華やかなてりが見られる真珠も、ドシリと安定した重厚感が見られる厚巻き珠も、そもそもは真珠層が良質でないと私たちの目に美しく見えません。海の深さがどれだけあっても、海水自体が透き通ってきれいなものでないと、濁った海水ではきれいな海の蒼さは見られないのと同じです。巻きの厚さによって特徴的な美しさがあり、もちろん厚巻きで華やかな真珠もあるわけですが、そういった例外的な真珠には例外的な価格がつけられますし、誰もが目にできるような流通量はありません。商品として誰もが購入できるものの場合、華やかな美しさのものは標準的な巻き厚、重厚感がある美しさのものは厚巻きの可能性があると、予備知識を持っていただいてよいと思います。「厚巻きの可能性がある」と書きましたのは、一般に、濁った真珠を重厚だと感じやすいので、そこは要注意です。
海と比較して説明した理由
理由は二つあります。
1)仕組みが似ているから
海水はほぼ無色透明ですが、海面で反射する光(表面反射)と中に入っていく光(拡散反射)があり、それらの現象によって私たちには青く見えると理解していますが、真珠も同じです。真珠層の結晶はほぼ無色透明、光の反射や干渉で光沢やてりが見られます。
2)お客様の言葉
ピュアグリーンのネックレスを対面販売させていただいたとき、そのお客様が「私が今まで思っていた真珠とは全然違う。この真珠の中には海がある。」とおっしゃいました。一般の方にお伝えする方法として、一般の方の感想を引用させていただくと伝わりやすいのではないかと考えました。
番外編:砂利浜はナチュラルグレー
写真のような青さが見られるのは白浜だと思います。砂利浜の場合は、海の色もグレーや、グレーがかった緑に見えることが多いのではないでしょうか。どちらも海水は無色透明なのに見え方が違うのは海底面の色が違うからだと思っております。ナチュラルグレー、ナチュラルブルーと言われる真珠は、真珠層と核の境目あたりに有機物(かさぶたのようなものををご想像ください)が含有されていて、その影響でグレーやブルーに見えますが、真珠層の結晶の色はホワイト系と同じでほぼ無色透明です。
この仕組みを利用して人工的にブルーグレーの真珠に仕立てる技法のひとつに、コバルト加工があります。真珠の核に使われるのは淡水貝で、これにガンマ線照射を行うと黒く変色します。海水真珠はその影響を受けないので、出来上がった真珠にガンマ線を照射すると核の上に巻いた真珠層はそのままで、核だけが黒く変色します。こうして底面の色を変えることで、私たちへの見え方を変えているのです。
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