真珠ネックレスのシリコンクッションには何の意味があるの?

ここで説明していること

・健康な真珠にシリコンクッションは不要です。
・スタイルとしてお好みでしたら、シリコンよりオールノッツをおすすめします。
・店頭にある時点でシリコンが使われているものは、ご購入前に理由の確認を。
・気軽なアクセサリー感覚でご購入の品でしたら、お気になさらずにどうぞ。

ご興味をお持ちいただけましたら、以下へ読み進めてください。



1.はじめに

真珠の粒と粒の間にシリコンクッションが入っているネックレスをご覧になったことありますか? 「粒と粒がこすれるのを防ぐ、真珠に優しい仕上げ方法です」という説明がされていることがほとんどですが、実はこれ、「間違い」とまでは言いませんが、それよりも大きな別の意図があって使用されています。


2.シリコンクッションは真珠に優しいの?

優しいか優しくないかと言いますと、穴口がぜい弱な真珠や、ひどく薄巻の真珠にとっては優しいと思いますが、健康な真珠にとって「優しいか優しくないか」は配慮が必要な問題ではありません。そして、「必要か不要か」で考えると「不要」です。もし必要であれば、当店はもちろん、超有名真珠店さんのすべてのネックレスにシリコンが使用されているはずですが、いかがでしょうか。

※穴口がぜい弱な真珠の例



3.実際のシリコンクッションの使用目的とは?

その1)長さを稼ぐため

真珠の粒と粒の間にシリコンクッションを入れた分だけ、ネックレスの全長が長く仕上がります。
標準よりも若干長めをご希望のお客様への対応策として、諸事情により真珠の足し珠ができない場合にシリコンで長さを稼ぐ方法があります。

その2)ネックレスの粒数を減らすため

先述のように全長が長くなるところを、粒数を減らすことで標準の長さに修正することができます。通販でおなじみの「あれもこれもついてお値段据え置き」的な販売方法の場合、ネックレスにシリコンクッションを使用することで抜いた真珠の粒が「あれもこれも」のアイテムに使われていることがあります。
また、安価なネックレスを数多く販売する場合に、原価圧縮の手段として使用できます。例えば 8-8.5mm のネックレスの標準的な粒数は50粒ですが、シリコンクッションを使用することで、2粒ずつ抜いても標準の長さをキープできます。こうして24本のネックレスから2粒ずつ抜いていくと、抜いた粒だけで25本目のネックレス(下に補足あります)が出来上がります。

その3)真珠の歪みから生じるネックレスの線の歪みを補正するため

ネックレス用の真珠の歪みの多くは穴口付近の突起で、一般にラウンド系と言われるものの中にも多く見られます。突起部分を穴口にすることでネックレスに仕立てた時に歪みが目立ちにくくなるのですが、糸仕上げで教科書通りにしっかり締めると下の写真のように直線状になりません。(わかりやすい例にするため画像はバロックシェイプの真珠を使用しています)
同じネックレスをワイヤー&シリコンで仕上げるとかなり歪みが補正されます。

着用時のイメージとしては、伸ばした状態ほど線の歪みは見られなくなりますが、矢印部分に弧の乱れをご確認いただけると思います。また、シリコンを使用した方がネッックレスの全長が長くなっている点もご確認くださいませ。


その4)カジュアル度をアップして普段使い寄りに仕上げるため

全長が少し長くなること、真珠の粒と粒の間に空間が生まれることでゆったりとした雰囲気に仕上がり、普段使い向きのカジュアル感がアップします。
例えば、形が歪んでいるものの、色テリが綺麗な真珠を使って、真珠のチャームポイントを気軽に楽しむといったスタイルにはたいへん有効です。

その5)オールノッツ風に見せるため

その3、その4については、オールノッツ仕上げにすることでより上等な印象になりますが、オールノッツはとても手間のかかる手法のため、安価な製品では採用されにくいです。ご予算のある方は、有料となってもオールノッツをご選択いただくことをオススメいたします。


4.番外編 シリコンやオールノッツでなくても、ゆるめに組めば?

上の「糸でしっかり締めた状態」をご覧いただいて、「やりすぎ」だと感じた方もいらっしゃると思います。実際、線の歪みはきつく締めるほど大きなものになりますので、通常の糸仕上げでも「ゆるゆる」に組むことで直線状にはなります。ですが、ネックレスを机などに置いた状態で直線状になっても、着用時に綺麗な弧を描くかというと、必ずしもそうとは言えません。
私たち業者はなるべくネックレスが張るようにしっかり締めることを心がけています。これには、張りがある方が着用時に綺麗な弧を描くということのほかに、もう一つの理由があります。
「緩みが気になってきたら糸替えをオススメします」とお店で説明を受けたことはございますでしょうか? ネックレスが緩んでくると、糸が切れるリスクが高まるので、緩みが気になりはじめる頃が黄信号、緩んで真珠の粒間に露出した糸が指でつまめるようになったら赤信号と思っていただくのが良いでしょう。 よって、はじめからゆるく仕上げるということは、糸切れのリスクが高めの状態でゴーサインを出すことになります。
では、なぜ緩いと糸が切れやすくなるのか?を解説いたします。 緩いということは、糸の上を真珠がスライドして移動します。 真珠の穴は機械を使用して、高速回転するドリルであけるため、穴口が鋭利な角がたった状態になっています。 糸の上を真珠がスライドするたびに、穴口の鋭利な角が糸を傷つけていくのです。
今では強度のある糸が使えるようになったおかげで、糸切れのリスクはずいぶん小さくなり、昔ほどきつく締める必要もなくなりましたが、当店ではお客様のご希望でゆるく仕上げる場合にはワイヤー仕上げをオススメさせていただいております。


5.番外編 25本目のネックレスにあたらないためにはどうすればいいか?

例として、24本のネックレスから2粒ずつ抜くと、抜いた粒だけで25本目のネックレスが出来上がると書きました。真珠ネックレスは、職人さんが1本ずつ全体の調和を見ながら組んでいて、繊細なバランスの上に成立しています。ここから2粒抜くことで調和が明らかに崩れるとは考えにくいですが、抜かれた2粒の寄せ集めで組まれた25本目については、皆様のご想像通り、残念な状態になります。
ネックレスの調和については、その評価ができるまでにそれなりの経験が必要ですから、店頭で一般消費者の方が調和の乱れに気づくのは難しいと思います。お買い物で気分が上がっていたり、お店の照明でわかりにくくなっていたりするので、なおさらです。
気づいていない=気にならないからOK という判断もあると思いますが、25本目にあたったらいやだな…と思われる方の方が多いのではないでしょうか?
25本目にあたらないためには、購入前に店員さんに金具を除いた真珠部分の長さを測ってもらいましょう。これが、シリコンが使われているのに約40cmで仕上がっているものは、やめておきましょう。それら全てが25本目とは限りませんが、疑わしきには手を出さないのが無難ですね。