花珠真珠 花珠検査のリアル 2021年4月版

 

ここで説明していること

・アコヤ真珠が花珠真珠になる過程を紹介します。
・業者の評価と花珠検査は見ているポイントが違います。
・結局は販売店のモラルの問題。

ご興味をお持ちいただけましたら、以下へ読み進めてください。

1.はじめに

「花珠真珠=最高品質」という誤った情報を発信する販売店があまりにも多いことから、そのまま誤解しておられる消費者もとても多いです。ここでは、花珠検査の実情をリアルにレポートしますので、私たち販売店が花珠鑑定書つき製品を皆様にご紹介するにあたって、裏でどのような準備をしているのかを知っていただき、「花珠真珠とはこういうもの」といったご自身なりの理解をもっていただけましたら幸いです。真珠科学研究所の検査項目、内容については触れておりませんので、予めご了承くださいませ。


2.素材準備の方法は二通り

真珠は鑑定書つきで生まれてくるわけではないので、流通のどこかの段階で、業者の誰かが検査を通し鑑定書をつけて流しています。よって、販売店が花珠鑑定書つき製品を販売するには、以下二通りのどちらか以外に方法はありません。
・すでに鑑定書がついた状態の品を仕入れる。
・仕入れた真珠を自分で検査に出す。
というわけで、ここでは後者の「仕入れた真珠を自分で検査に出す」をレポートいたします。


3.まずは素材選び

「花珠真珠=最高品質」ではないので、やみくもに高い素材を仕入れればよいということではありません。今回は、弊店の定番商品「一粒パールネックレス」用の真珠手配です。定番商品で販売価格が決まっているので、仕入予算も決まっています。希望を加工会社さんに伝え、アポイントをとりました。

安い真珠で花珠検査をパスするテクニックを紹介するための企画ではないので、即入手可能なものの中から、予算内で最も高額な素材だけを用意していただきました。サイズは8.5mm-9.0mm、ご参考までにこの素材で組み上げた一連のネックレスの予価は60万円です。

では、写真をご覧ください。窓際の自然光のみ、スマートフォンで撮影しています。

用意された素材の中から仕入れるものを選ぶわけですが、まずは自分の評価で格下のものが含まれていないかを確認します。滅多にないことですが、もしある場合は最初に候補から外してしまいます。次に、今回の自分の目的が花珠検査を通すことである以上、真珠科学研究所の検査項目と合格基準に合わないものは外さなければなりません。どれだけテリが強く、見た目にきれいでも、NGポイントが目視確認できるものは仕入れません。

さて、今回は少し多めに検査に出したいので、こういった感じで


左)見送り
右)検査へ
とします。少し多めと言いましたのは、不合格っぽい「グレーゾーン」を見送らずに検査に出すという意味です。


4.花珠検査に出す

花珠検査は真珠科学研究所で行われますので、私たち業者は検査を受けたい素材を預けます。今回の依頼数は33個です。依頼する数や時期にもよりますが、1週間~10日ほどで戻ってきます。


5.花珠検査の結果が出る

今回の結果はこの通りでした。

多めに出したとはいえ、厳しい結果です。

ここで消費者のみなさまにお伝えしたい「だいじなこと」があります。真珠の加工会社(メーカー)がつけた価格は、合格した粒も、不合格となった粒も、同じでした。そして、仕入れる側の販売店(私)も、その価格に納得したからこそ商談を進めました。つまり、花珠検査の合否が出る前から真珠には価格がついていて、業者間ではその価格で通っている(価格に見合う価値があると判断している)わけです。しかも、今回は弊店で販売実績のある価格帯の中で、充分に高額なところでの取引であったにもかかわらず、この結果でした。

もちろん、毎回このような結果になるわけではありません。合格の割合は一定ではなく、9割近く合格になることもあります。そして、より高額な素材で今回と同じような結果が出ることもあれば、安価な素材でたくさん合格することもあります。

消費者の皆様方には「いったいどうなってるの?」と思われることでしょう。実際、私たち業者も花珠鑑定書がここまで広まる過程で、皆、反抗期を経験しています。

では、なぜこのような合否結果が出るのか? 理由は、とてもシンプルです。
業者と真珠科学研究所、それぞれで見ているポイントが違うからです。根本から違います。
業者は真珠を売買するのが仕事ですから「この真珠にいくらの価値があるか?」という目線で評価します。当然「美しさ」は最も重要な評価ポイントの一つです。自然光(直射日光ではない)下での目視確認で評価します。
真珠科学研究所は、自社で定めたチェックポイントを確認します。売買はしないので、その真珠の市場価値には触れません。「美しさ」などの感情的要素は、人それぞれに好みが影響する(絶対値を測れるものではない)ため、触れません。照明器具など特殊機材を使って、真珠層内部を確認します。

これを身近な例として、料理に例えますと、真珠科学研究所は見栄えや味は評価しておらず、使われた調味料の種類や分量をチェックします。塩の使用量が1g以下なら合格、1gを超えていれば不合格というような線引きのイメージですので、同じメニューでも病院食が合格、高級レストランが不合格になることもあります。業者は使用された材料の価値、味、香り、食感や見た目など、人がどれだけ楽しめるかに重点を置いて評価していますので、両者で意見が分かれることは普通にあるわけです。
業者「これはうまい!」
真珠科学研究所「でも塩分とりすぎになるからダメよ」
といったところですかね。
そして、500円の料理にも合否があり、1万円の料理にも合否があることはイメージしていただけたと思いますが、いかがでしょうか。

話を真珠に戻しまして、どれだけ高額な真珠でも自社で決めた基準に合わなければ不合格、どれだけ安価な真珠でも基準を満たしていれば(不合格にする理由がなければ)合格です。検査員は真面目で優秀な方々です。人の行動の常で、繰り返すうちに徐々に評価が厳しくなっていきます。不安要素をはじく仕事を繰り返すうち、不安を見つけだそうとする心理が働いて、合否判定が厳しくなっていくのでしょう。これは人が責任を負う仕事との向き合い方として自然なことで、仕方のないことなので、時折、責任者によって検査員にリラックスの指示が出されます。合格率に波があるのはそのためです。そして、そこに悪意や企みはないということをご理解いただければ幸いです。


6.天女検査に出す

「オーロラ天女はオーロラ花珠よりも格上だ」と誤った情報を発信する販売店があまりにも多いことから、そのまま誤解しておられる消費者もとても多いです。オーロラ天女は、オーロラ花珠に対するオプション鑑別なので、まずはオーロラ花珠の検査をパスさせてから、希望者だけが天女検査を受けます。真珠科学研究所が自主的に振り分けてくれるものではありません。というわけで、先の画像でご覧いただいた花珠検査に合格した10個を天女検査に出します。


7.天女検査の結果が出る

今回の結果は、合格2個(正確には合格見込み、後述します)、不合格8個でした。合格率の波について上で書きましたが、今回はこういう結果だったというのがリアルです。

注)オーロラ天女は「この状態で販売します」という形(例えばペンダントにするのであればペンダントに仕立てた状態)にして検査を受け、合格すれば鑑定書が即発行される決まりです。今回は特別にお願いをして検査だけしていただきましたので、正確には合格見込みであって、合格を証明するものは何もいただいておりません。

さて、この結果からオーロラ天女が「これだけの狭き門を通り抜けたすごい真珠」と評価されるのは自然なことだと思います。同時に、業者が同じ価値だと評価した真珠であれば、合否の差は写真の通り、「誰の目にも明らかな差があるわけではない」ということも、否定のしようがないリアルです。また、天女合格見込みの2個よりも表面光沢が強い粒が不合格組(といっても花珠検査には合格している)の中に数個あることも重要なポイントで、表面光沢を重視したい消費者が鑑定書のタイトルにこだわってしまうと理想の真珠に出会えるチャンスが減ってしまうことを教えてくれています。天女をご検討いただく際には「光沢とてりの違い」を知っていただいた方が良いと思いますし、鑑定書つき製品を販売する店には、その意味を説明する責任があるのではないかと思います。


8.オーロラ天女は販売店のモラルが問われる

真珠の購入を検討しはじめた時に、ネットで情報収集するのは今の時代のスタンダードですね。私自身が消費者の立場でネット検索してみると、「花珠真珠は最高品質の真珠。なかでもオーロラ花珠が良いらしい。そして、オーロラ天女はオーロラ花珠よりさらに良いらしい。」との情報を得るまでにさほど多くの手間や時間はかかりませんでした。間違った情報とはいえ、自分で収集した情報であり、初期段階でインプットされた情報ですから、信用度が高めで頭に入るように思います。この状態で「それは間違い」との情報に出会ったとき、人はあとから出てきた、自分と違う意見の方を疑います。

こういった光景は業者ならだれでも想像ができるわけで、消費者心理につけこむのか、正義を通すのか、販売店のモラルが問われるところです。

では、最後にこちらの写真をご覧ください。

業者間ではすべて同価格で取引される真珠ですが、左のグループは花珠検査合格を目的として私がNGを出したもの、真中のグループは花珠検査を受けて不合格になったもの、右のグループは花珠検査に合格したもので、その中には天女検査合格見込みの2個が混ざっています。こうして3グループを見比べて、どのような感想をおもちでしょうか。

これが花珠検査のリアルです。安心できる点、疑問に思う点、どちらもあると思いますが、解釈の仕方は皆様におまかせいたします。さまざまな価格帯で鑑定書がつく真珠とつかない真珠がそれぞれにあるので、真珠を格付けする手段として鑑定書を利用するのは間違いだと弊店では考えています。消費者の方々が鑑定書に頼りたくなるのは理解できますが、業者にとって鑑定書は付属品であるべきで、あくまでも商品の主役は真珠そのものという姿勢を大切にしたいと思います。ご不明な点などございましたら、お問い合わせください。