こんにちは。竹内です。
近年、真珠の価格は上がり続けていて、さらに、早ければ今春、遅くとも秋には(今年の新珠が流通し始めるころ)歴史的にも稀な値上げが見込まれています。
生活に身近な品々が値上げラッシュの中、「真珠、お前もか!?」と思われるかもしれませんが、実は真珠の値上げの要因はちょっと違います。ここでは真珠価格高騰の背景を整理して、消費者の皆様がそれぞれにご自分なりの考えをまとめていただく参考になればと思います。
近年、真珠価格が上昇し続けている理由はふたつです。
1.需給バランスの偏りが大きすぎる
2.生産量のほとんどを中国が買っている
簡単に説明すると、少量しかないものを業者全員が自社存続をかけて取り合う戦いがあり、無理をして買って販売価格が高騰しても中国が全部買い上げるので、歴史的にも例がないほどの値上げ幅で価格が更新され続けているわけです。
私がお伝えしたいことの結論を先に書いてしまいますと、今後真珠が必要になる方は「今すぐ動いてください」ということです。弊店では2019年12月以降何度もお伝えしていますが、「まだいいや」というお気持ちが結果として何万円、何十万円もの負担増としてご自身に返ってくること、にもかかわらず手に入る品質が低下していくことを強く意識していただきたいと思います。
ものの値段が上がって、売れ行き好調。一見、業界としては好景気の循環が出来上がっているように見えますが、抱えている問題は深刻です。
ここからは話が難しくなりますので、ご興味のある方だけ読み進めてみてください。
養殖業者さん目線
単価は高騰しているものの量がないので収入が増えているとは言えません。算数で示すとこうなります。
量がまだ足りてた時代:単価10 x 個数100 = 収入1,000
量が完全に足りない今:単価100 x 個数10 = 収入1,000
そして、この1,000という数字は平成初期と比較して圧倒的に小さなものになっていて、決して子供に事業を継がせたいと思えるものではなく、むしろ苦労を背負わせたくないと考えるレベルです。引き続き母貝がない状況なので仕事にならないし、今年の単価の高騰を自分の花道ととらえ、引退を考えている人が多数いらっしゃると聞きます。
加工業者さん目線
長年にわたって課題とされてきた「長期売れ残り在庫」が、去年ほとんどの加工業者さんでゼロになりました。つまり、今はどこも金庫が空っぽの状態です。事業を続けていくためには、高くても真珠を買わなければなりません。全社が同じマインドのため、入札は過熱し、仕入価格は高騰しました。高く買っているので安く売れるはずはなく、今年も中国に期待するしかありません。地政学的なリスクが高まらない限りはおそらく大丈夫だと思いますが、少なくとも日本マーケットのことは全く見ていないでしょう。
国内小売業者さん目線
人気の8-8.5mmネックレスと耳飾りのセットが最低30万円から、オーロラ花珠は最低50万円からとなった場合、しかも最低価格では品質的に充分とは言えないわけですが、そのような相場でこれまでのように多くのお客様に真珠をお届けできるのか?という大問題が目の前にそびえたっています。個人的には相当難しくなると考えていて、根性論で乗り切れるようなものではなくなり、事業計画をいちから練り直さなければならないところにいると思っています。同業者の中には販売をやめ、メンテナンス専門店へのシフトを検討している方もいると聞きます。
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さて、いかがでしたでしょうか。真珠価格高騰の要因はコロナでもウクライナ情勢でもないことがおわかりいただけたと思います。今後、国際情勢が安定しても価格が戻ることはありませんし、生産量が増える見込みもありませんので、真珠を買う人が世界のどこかにいる限り価格は上がり続けるしかありません。そして、日本では価格云々以前に売場から姿を消して、目にする機会すらなくなることもあり得るかもしれません。まずは中国マーケットの動きを注視しつつ、母貝が安定的に供給される日を待ち、弊店なりにできることを模索していこうと思います。
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