こんにちは。竹内です。
ホワイト系の真珠とナチュラルグレーの真珠、サンドペーパーでごしごしやって、真珠層を粉末にしたとき、それぞれ何色だと思いますか?
正解は「どちらも白」です。
ナチュラルグレーがグレーに見える、ナチュラルブルーがブルーに見えるのは、真珠層に色がついているからではありません。今回はその解説をしていきます。
では、身近な例から
白浜の波打ち際と砂利浜の波打ち際の画像です。これらの画像に天候の違いはありますが、多くの方が実際に見た経験があると思うので、頭の中で補正してみてください。
(自分と海面との位置や角度の関係にもよりますが)一般に、白浜の海水は明るい青、砂利浜の海水は暗いグレーに見えます。でも、海水に色がついているわけではないことは皆様ご存知の通りです。
真珠のナチュラルグレーもこれと同じ現象で私たちの目にグレーに見えているだけで、真珠層の結晶に色がついているわけではありません。
この海の例を真珠に当てはめると、海底が核の表面、海水が真珠層になります。つまり、ナチュラルグレーの真珠の核の表面あたりには、真珠をグレーに見せる原因が潜んでいるということです。
その原因は有機物です。私たち人間のかさぶたのようなものができて、それを覆い被すように真珠層が積みあがっていったと思ってください。砂利浜のように底が黒っぽくなっていることで、私たちの目にはグレーの真珠に見えているわけです。
そして、有機物の色の濃さや大きさなどによって、濃いグレーや薄いグレー、ブルーなどに見えたりしています。
色の濃さによる価値の評価については意見が分かれるところで、共通の認識はありません。濃いほうが好きな業者は濃いことをプラス評価しますし、あくまでも形やキズで評価する業者もいます。弊店は後者で、色の濃淡に関わらず形がゆがんでいればマイナス評価、キズが多ければマイナス評価、連相については揃っていることよりも雰囲気を重視します。ナチュラルグレーは、各粒が好き勝手な色をしているので連相をビシッと揃えるのはとても難しく、ジャズの音階のように「合ってるのか外れてるのかよくわからないけど連続する流れが印象深く美しい」、そういう雰囲気を重視します。
また、一般に色が濃いものほど形のゆがみや大キズを持ちやすい特徴がありますので、弊店の場合はどちらかというと薄いグレーの方が高評価になることが多いです。ホワイト系やピンク系に対しての薄いグレーの立ち位置は、日本人の文化である薄墨の世界観にあり、それゆえ喪の席での着用をおすすめしております。
それでは、ナチュラルグレーの退色について解説します。
私たちの目にはこのように見えているだけで、真珠層がこういう色をしているのではない、その原因は有機物だと説明しましたので、勘のいい方ならもうおわかりだと思いますが、仮に有機物が一瞬で消え去ったならその粒はホワイト系になります。
つまり、有機物自体の経年変化や、乾燥による破損など、有機物の状態に変化が起こると、私たちに見えている色も変化するということになります。真珠科学研究所さんはこれを予防する策としてマイクロパーマネント加工をおすすめされています。確かに理にかなった対策だと思いますし、弊店でもおすすめするところですが、完全に予防できるわけではないと思っていただくほうが良いと思います。また、施工をする過程で有機物が破損する可能性もありますので、施工前と印象が多少違って見えることもあると思いますので、予めご承知おきいただくことをおすすめいたします。
番外編 コバルト加工とは何か?
生まれながらに有機物をはらんだナチュラルに対して、そのグレーに見える仕組みを利用したコバルト加工をいう手法があり、比較的多く流通しています。ナチュラルか、加工品かで、その価値は大きく異なります。
そこで、コバルト加工の手法について少し触れておきます。真珠層の底に黒っぽいものがあることで私たちの目にはグレーに見えるわけですから、核自体を黒く変色させることができればその真珠はグレーに見えることになります。
核は淡水貝を球体に加工したものなのですが、淡水貝は特定の放射線を照射されることで黒く変色します。また、その核のうえに形成された真珠層はこの影響を受けることはありません。この特性を利用して、核だけを黒く変色させる技術がコバルト加工です。発見した人は大リスペクトですが、一般にコバルト加工が施される真珠の多くは薄いクリームで、私個人はクリームの無駄遣いだと思っており、コバルト加工品に対してはディスリスペクトです。
なにかご不明な点等ございましたら、お気軽にコメントをください。
よろしくお願いいたします。
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