こんにちは。竹内です。
先日から真珠がついたクラスプの画像を投稿していましたが、一旦これで最後です。
世の中には需要がなくなっても残すべきものと、人知れず消えていくものがあるのかもしれません。
真珠つきのゴールドクラスプは絶滅危惧な状況で、残すべきだとは言いませんが、なぜこのような状況になってしまったのか、私に見えていた変化を残しておこうと思います。実際には私に見えていないところでたくさんの人の葛藤があったのかもしれませんが、知らないことは書けないので、その点はご容赦くださいね。
1.金価格の高騰
田中貴金属工業さんのサイトによりますと、金の対円の通年平均価格はこのように推移しています。
1990年(平成2年) | 1,826円/g |
2000年 | 1,014円/g |
2010年 | 3,477円/g |
2020年(令和2年) | 6,122円/g |
ゴールド製クラスプは金相場の影響を強く受けるため、年々高額になっていきました。販売価格が上昇せざるを得ないのはもちろんですが、メーカーさんにとっては販売数が減り続けるゴールドクラスプを作り続けることの負担が大きくなっていきました。
2.バブル崩壊後の景気の低迷と真珠製品の販売価格の低下
これは皆様ご承知の通りで、世間ではより安いものが好まれ、私たち真珠業者も安く売ることに熱心になってしまいました。結果、原価を下げることに意識が向きすぎてしまい、ゴールド製クラスプは年々使いにくくなっていきました。
3.原価圧縮のしわ寄せが養殖業者さんに向いてしまったことで生産量の低下になった
私たち小売業者が安く売るために安い素材を求めた結果、浜揚げ珠の入札価格が低迷し、養殖業者さんの収入低下に直結してしまいました。頑張っても儲からない状況が続いたことで、養殖事業を継ぐ、新たに始める人たちは減る一方となり、現役世代も高齢化し、まずはベビーパールの生産量の激減が始まりました。ベビーパールは主力サイズの真珠を作りつつ、少しの時間の余裕を使って作っていたもののため、「余裕がないから作れない」と最初に切られることになりました。クラスプにつける真珠が入手できない、入手できても高額すぎて使えないという状況になりました。
4.花珠真珠キャンペーンの成功により、消費者が求める軸が変わった
花珠真珠キャンペーンがバズる前、私たち業者はある程度上等なネックレスに対してその価値が伝わりやすくなるよう自主的にゴールドクラスプを使用していました。花珠真珠キャンペーンがバズって以降は、消費者が求める軸が変化しました。真珠は価格なりの品質という軸がわかりにくい商材であり、花珠鑑定書が支持されたのもその影響が大きいと思います。第一条件が「花珠鑑定書つき」とおっしゃる消費者が増え、業者にとっては花珠鑑定書を取得するためのコストが突然のしかかってきて、そのうえで安く売らなければという気持ちを変えることができず、ゴールドクラスプを使う機会がめっきり減ってしまいました。
まとめ(私感)
振り返ってみてあらためて思うのは、「安いってこういうことなんだな」です。安くするために切り捨てていくものがあり、かつては品質の一つの指標であったゴールド製クラスプや、真珠つきのクラスプが切り捨てられ、いつしか「そういえば見なくなったね」からどんどん失われていって、いずれ忘れられていくんだと思うと、安く売るためにどうすればいいかばかりに気を取られてきた私たち真珠販売業者の責任は相当おおきい。
—
この記事へのコメントはありません。