こんにちは。竹内です。
買い替えのお客様からよく聞かれる話の一つに「いま使っているネックレスを買ったときはとても高額だった。真珠は随分安くなったのねぇ。」というものがあります。30年ほど使って、そろそろ買い替えをとお考えのお客様からよく聞かれることです。
この記事では、30年前と比べて、いま、真珠は安くなったのか?について、シェアいたします。
結論:消費者が安く買える手段と機会が増えただけ。真珠の価値はそこまでは変わっていない。
結論から書きましたが、以下に説明してまいります。
30年前の状況
今から30年前といいますと、1990年、平成2年ですね。私はアメリカにいたので、当時の日本の状況を語れるほどは知りません。先輩から教えてもらった話では、景気に陰りが見え始めたものの、真珠は生産現場が好調で平成3年にピークを迎えたので、思い返すと自分たちの業界はまだまだいけると思っていたのだそうです。
今の状況
30年の間に一番変わったことは真珠の生産量です。正確な数字が入手できませんので、ご紹介できませんが、文字通り激減しました。何十分の一になっています。特に伊勢志摩地区では生産者の高齢化に伴い衰退の一途です。また、昨秋には真珠養殖に使用する母貝が全滅に近い大量死をしたことで、この先も明るい話題に乏しい状況です。
流通の変化と通販の躍進
30年前の真珠の購入方法はデパート、宝飾店、時計店など、店頭に足を運んで購入するのが普通でした。新聞を使った通販、カタログショッピング、ラジオやテレビの通販などもありましたが、それらを利用して真珠を購入する人はとても少なかったと聞いております。真珠が養殖業者の手から、販売店を通して、お客様の手に渡るまでの間に、とても多くの人が関わっていました。今の世の中なら「ここ要らないんじゃね?」とスパッと切られてしまう位置にもたくさんの人がいました。多くの人が関わって、関わった人の分だけその生活がありましたので、商品は自ずとそれなりの価格で販売されておりました。インターネットの普及が進み、ネット通販という新しい販売方法が加わりました。景気の悪化、真珠の生産量の低下により、卸商に専念していられなくなった業者さんたちが多数ネット通販に進出して、真珠を専門店から通販で購入するというスタイルが根付きました。中間マージンカットの激安価格を謳うことが流行りました。ネット進出した専門店の多くは元卸商だったことから、「安いほど喜ばれる」という卸の商慣習をそのまま持ち込んでしまったことと、小売経験が未熟だったゆえの「ネットは安くないと売れない」という思い込みによって、消費者から見た真珠の相場はここで一段落ちました。それと同時進行で生産量の低下がじわじわと影響していきました。
生産量の低下が招いたもの
生産量の低下は、商品の量、質の低下に直結します。例えば10採れて、そのうちの1が高品質という割合が標準的なものだとしたら、採れる量が1になると、高品質は0.1になります。これに比例して、真珠に携わる人の数が10から1に、真珠を買う消費者の数が10から1になるなら理屈上はバランスが取れますが、実際そうはなりません。採れる量が減って、買う人が変わらなければ、品不足になり、価格は高騰するのが相場ですね。それなのに消費者心理としては「安くなった」のはなぜでしょうか?
ひとつは、加工業者さんが自主的に在庫品とのすり合わせをして、急激な価格変動を抑えたことです。
それ以上に重要なのは… 真珠が10採れていた時代には、真珠屋の良心として「これは世に出すべきではない」とふるい落としていた真珠がありました。それでも充分な量が確保できていたからです。しかし、生産量が激減したことで、良心を言っていられなくなったのです。「これを世に出すためにどうすればいいか」を考え始めました。そうやってでも量を確保しないと、質以前に量の供給ができなかったからです。つまり、昔は流通しなかった品質の真珠が、当たり前に流通し始めたのです。ただ、そういった真珠の評価はやはり低いので、安価で取引されます。こうして以前には見られなかったような安価な商品が流通し始め、そのプライスを見た消費者が「真珠は安くなった」と感じているのです。
まとめ
自分が今のネックレスを買ったときはデパートで40万円だった。今だとネットで大きめのサイズのものが10万円でも選べるようになっている。真珠は安くなった。でも、とても高額なものもある。一体どうなってるの? というのが今回の話ですね。
流通の変化で消費者が真珠を安く買えるようになったのは事実ですが、その落差はそれほど大きなものではありません。以前には目にすることのなかった安価な品が普通に流通するようになったことで、買いやすい時代になったと思われることでしょう。ですが、その安すぎる品は、安すぎる品質のものが、今の流通における妥当な値段で売られているだけです。
すべての人が高額な真珠を買うべきだとは言いませんが、真珠は本来高価な品であることをお忘れなく、もしすでに安価な品を入手していらしたなら、それをご愛用いただき、変色等の不具合が出たときには、その時こそ失敗しない買い替えをご検討いただけますよう、お願い申し上げます。
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