真珠の変色とは?
ここで説明していること・真珠は変色します。一番大きな要因は「タンパク質」です。・汗負けを変色と誤解して放置するのはもったいないです。 ・無調色の方が変色に強いの? ・変色対策としてできることは? ご興味をお持ちいただけましたら、以下へ読み進めてください。 |
1.はじめに
真珠が経年変化で変色することは最近随分と知られるようになりました。とはいえ、一般的には「真珠は変色するらしい」といった程度に留まっているようで、「真珠のどこがどう変色するか?」などについてはあまり知られていないようです。
というわけで、当店の取扱商品でありますホワイト系アコヤ真珠に話を限定して変色について説明させていただきます。
2.変色と誤解されがちな汗負けについて
真珠の変色と言われるものの中には、実際は変色ではないのに、変色として誤解されているものがあります。汗負けです。
「真珠の表面が白濁化し、テリや輝きが鈍くなる現象」のことですが、「表面が白濁化」することから「変色」と受け取られてしまうようです。これは汗や皮脂、化粧品などに真珠表面が侵され、もともと透明だったガラスがスリガラス状になってしまったものとイメージしていただければよろしいかと思います。てりが弱くなったり、輝きが鈍ったように感じる場合、ほぼこれにあたります。
ご自分の真珠がこのような状態になりますと「変色してしまった…」と残念に思われることでしょう。ですが、これは技術をもつ人の手によって再生することが可能ですので、あきらめることはありません。
ただ、再生可能とはいえ、消費者が自分でできる種類のものでもありませんし、購入したお店がアフターサービスとしてどこまで面倒を見られるかによって、再生させたくてもできないこともあり得ます。
当店では2年に一度の糸交換をオススメしておりますが、この際に白濁化した部分の有無をチェックして、みつかった場合はこれをメンテナンスしたうえでお返しさせていただいております。
3.タンパク質の変色とは?
真珠層の断面は「レンガの壁」のような状態になっていて、真珠層の結晶がレンガ、タンパク質がセメントにあたります。真珠層の結晶自体はほぼ無色透明のため、セメント役のタンパク質の色が透けて見えることになります。真珠の実体色(ボディカラー)とは、このタンパク質の色といっても良いと思います。そして、このタンパク質が経年変化により変色することで、真珠の変色となるわけです。一般的な傾向として、黄色っぽくなるパターンと、茶色っぽくなるパターンがあります。
粗悪品扱いの「薄巻き珠」には、この変色がかなり早く訪れるといわれていて、その理由は明らかではありませんが、実例の多さから例外は少ないと思います。当店の花珠真珠は 0.4mm 以上のまき厚があり、雑なまきのものは取り扱っておりませんので数年で変色することはありませんが、何十年とお使いいただく間にゆっくりと変化していくことは否めない事実です。おそらくご自身ではお気づきになることはなく、お嬢様や、お嫁さんの真珠を新調した際に、新品と比較してお気づきになることでしょう。
<参考>
タンパク質の変色が発生してしまった場合、タンパク質の色素を抜く以外に対処方法はございませんが、実際に再加工しますと、薬品負けによる「肌荒れ」などが発生し、変色以上に見た目を損ねることになってしまうため、変色は自然なこととして受け入れていただくのが良いと思います。
4.調色加工で使用した染料の変色とは?
染料の劣化によって、その染料の変色が真珠の色に影響を与えることはないですか?というお問い合わせはよくいただきます。厳密にはあり得ることかもしれませんが、気にしていただくほどのことではありません。
気にしていただくべきは、取り扱いです。ジャブジャブと水洗いをしたり、長時間水につけたりしますと、色が抜けていきます。染料は真珠に染み渡っていると考えるより、染料の粒子がところどころに引っかかって真珠層内部に留まっているとお考えいただければ、水に流されてしまう様子がご想像いただけると思います。
真珠表面にこびりついた汚れがある場合は、「決して水洗いせず、一度濡らしてかたく絞った生地でなぞるように拭いたあと、乾拭きをしてください」という説明を目にすることがあります。ご自身でお手入れなさる場合はそれで良いと思いますが、大事なポイントはかたく絞ることと、そのあとで必ず乾拭きをすることです。
5.変色対策としてできることは?
変色を避けることはできませんが、変色のスピードを遅延させることはできます。
ご着用後に放置せず、なるべく早い段階で乾拭きをしてケースに収納してください。ケースは日光を避けて保管してください。
とても基本的なことですが、最も効果的で、それ以外にできることはありませんので、ぜひ実践なさってください。
もっと気軽に真珠とつきあっていきたいとお考えの方は、フォーマル用のいいものと、普段使い用のアクセサリー感覚のもの、両方お持ちいただくと良いと思います。この場合に、普段使い用としてオススメしたいのは、「うす巻ではないもの」が大前提です。そのうえで、もともと黄色っぽい、もともと茶色っぽいものをお選びいただくと、変色しても振り幅が小さくすむので、印象はさほど変わらないです。